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セミナー ナノインプリント 展示会

2013年1月の展示会・セミナー

2012年2月に当ブログ開設しましたが、多くの方に訪問頂きありがとうございました。ナノインプリントについての記事を掲載させていただきました。来年も引き続きよろしくお願いします。

 

2013年もnano tech 2013に出展します。今回はドイツのholotools社と共同で出展しますので、場所はドイツパビリオン内となります。お気軽に足をお運びください。
今回の展示会よりビジネスマッチングシステムが設けられることになりました。詳細は下記URLを参照ください。
http://www.nanotechexpo.jp/icsbizmatch_nanotech.html

 

また、1/25(金)に講演を予定していましたセミナーの開催が確定しました。受講者は引き続き募集しておりますので、参加をご検討下さい。講師紹介割引きのご紹介も可能ですので、弊社までお問い合わせください。
セミナー詳細⇒1月ナノインプリント講演予定

ナノインプリント

有機ELの光取出し③

前回(有機ELの光取出し②)の続きとなります。

前回は、モスアイ構造による段階的な屈折率変化について解説を行いました。それを踏まえて、モスアイ構造による『臨界角』への影響を説明します。モスアイ構造による反射率低減のメカニズムは、『屈折率が徐々に増加していく多層膜』として説明しました。臨界角についてもこの『屈折率が徐々に増加していく多層膜』として置き換えて、モスアイによる影響を説明します。

 


臨界角とは射出角が90°となる角度で、入射角が臨界角以上の場合は全反射が発生することを前々回(有機ELの光取出し①)で説明しました。
屈折率の差がわずかでもあれば、計算式より臨界角は存在することになります。屈折率の差が0.001であったとしても、臨界角は87.4°となり、87.4°より大きな角度の入射角の光は、空気中へ抜け出せないことになります。

 


次に、もう1層追加された場合を説明します。各層の界面では、n=1.1と空気の界面では臨界角が65.4°、n=1.2とn=1.1の界面では臨界角が66.4°となります。n=1.2からn=1.1への媒質へ入ることができた光は、空気との界面で全反射する成分があるため、全てが透過できるわけではありません。
n=1.1と空気層の臨界角θ1より、n=1.2とn=1.1の界面での出射角θ4が大きい場合には、全反射が発生し透過できなくなります。一方、出射角θ4が臨界角θ1より小さな場合は、透過できることになります。
この2層のケースでは、入射角θ3の空気層まで透過する臨界角は、n=1.2とn=1.1の界面での臨界角に比べ小さくなります。つまり、θ3の臨界角は上層の臨界角に支配されることとなります。

 


最後にモスアイ構造の場合ですが、『屈折率が徐々に増加していく多層膜』ですので2層でのケースに層を足していった状態となります。考え方は同じで上層の臨界角によって下層の臨界角が決まっていきます。
通常の臨界角の計算では出射角を90°として計算しますが、層中での臨界角は出射角を上層の臨界角に設定して計算します。5層のケースでは最終的に臨界角は41.8°となり、屈折率1.5の単層と空気層の界面の臨界角と一致します。
層数を100層や1000層に細分化したとしても、臨界角は同じ計算結果となります。滑らかな屈折率変化が起きるモスアイ構造においても同様の現象が起きていると考えられます。

結論としては、モスアイ構造が最表面にあったとしても、臨界角は変化しないことになります。

 

イノックスでは、有機ELの光取出しに関連するナノインプリント金型やフィルムサンプル(基材:PET、ガラスなど)を取り扱っております。どうぞお気軽にお問い合わせください。

ナノインプリント

有機ELの光取出し②

 前回(有機ELの光取出し①)の続きとなります。

 モスアイ構造が表面にある場合の光取出しに対する影響についてを説明しますが、今回はその前にモスアイ構造による屈折率変化について触れたいとおもいます。

 モスアイ構造による反射防止機能は、「光の波長より小さな構造は、屈折率の変化を緩やかにすることが可能であり、これによって反射を大幅に低減できる。」と説明しています。「屈折率の変化を緩やかにする」とは、光がモスアイ構造を通過している時に屈折率が下図のように変化している状態になります。

 

 変化を緩やかにする状態を多層膜で表現すると下図になります。モスアイ構造を厚み方向に等分して、等分した層の屈折率を空気層と樹脂層の割合から計算します。モスアイ構造の高さが200nmだとすると、50nmの厚みの層が4層あり、屈折率が0.1ずつ増加している層構成となります。

界面の屈折率変化が1.0→1.5となると反射率は4%なのに対し、1.0→1.1だと0.23%となります。(入射角0°の場合)
1.1→1.2、1.2→1.3、1.3→1.4、1.4→1.5の変化でも0.2〜0.1%となります。単純な足し算でも約0.8%となり、段階的な変化による効果は絶大です。(実際には、各層の厚みや波長、反射光の影響が発生します。)

 モスアイ構造の反射率へのシミュレーションは、原理的にはこのような方法を用いて計算しています。下図のようにさらに細分化して計算することで、精度を高めることができます。

 今回は、計算が簡略にできるので、屈折率の変化が一定である条件で説明しています。直線的な変化ですが、モスアイ構造の形状によっては、直線にならない場合もあります。  反射防止機能で見た場合には、直線的な変化が理想的になるとは限りません。モスアイ構造の高さやターゲットとする波長、樹脂の屈折率等の影響を受けます。

 イノックスでは、有機ELの光取出しに関連するナノインプリント金型やフィルムサンプル(基材:PET、ガラスなど)を取り扱っております。どうぞお気軽にお問い合わせください。

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有機ELの光取出し①

 モスアイ構造やマイクロレンズ構造による有機ELやLEDの光取出し効率の向上については、多くの研究にて効果の実証がなされてきました。有機ELやLEDの発光効率を低減している大きな要因として『全反射』という現象があります。これは、屈折率の高い材料から低い材料へ光が移動する際に発生する現象があります。この現象を応用し光を閉じ込め伝達する方法が光ファイバーなのですが、有機ELなどにとっては迷惑な物理現象です。この『全反射』のによる光取出しへの影響に関して解説したと思います。

 

 有機ELの場合を想定しガラス基板内からの光が空気中に出る場合では、スネルの法則により屈折角θ2は入射角θ1よりも大きくなります。入射角を大きくしていくと、計算上では屈折角が90°以上なっていしまいます。この状態では、光はガラス基板から出ることができなくなり、界面で光がすべて反射してしまう『全反射』と呼ばれる現象が発生します。屈折角がちょうど90°になる入射角を『臨界角』と呼び、屈折率からスネルの法則を用いて導き出すことが可能です。ガラス基板の屈折率を1.5とすると臨界角は41.8°となります。

図、ガラス基板から空気中へ光が進む場合の界面での反射率

 入射角が臨界角以上になると、全反射が発生することから反射率は100%となり、上図の様な反射率のグラフとなります。ガラス基板と空気の界面だけでも半分以上の光が閉じ込められることとなります。実際の有機ELでは、発光層→透明電極→ガラス基板と複層を通過する為に、ガラス基板まで達する光は減少していますので、実際の外部発光効率は約20%程と言われています。
 
今回は、構造がない場合について解説しましたが、次回はイノックスでも取り扱っているモスアイ構造による影響を解説する予定です。

 

 イノックスでは、有機ELの光取出しに関連するナノインプリント金型やフィルムサンプル(基材:PET、ガラスなど)を取り扱っております。どうぞお気軽にお問い合わせください。