モスアイ構造やマイクロレンズ構造による有機ELやLEDの光取出し効率の向上については、多くの研究にて効果の実証がなされてきました。有機ELやLEDの発光効率を低減している大きな要因として『全反射』という現象があります。これは、屈折率の高い材料から低い材料へ光が移動する際に発生する現象があります。この現象を応用し光を閉じ込め伝達する方法が光ファイバーなのですが、有機ELなどにとっては迷惑な物理現象です。この『全反射』のによる光取出しへの影響に関して解説したと思います。
有機ELの場合を想定しガラス基板内からの光が空気中に出る場合では、スネルの法則により屈折角θ2は入射角θ1よりも大きくなります。入射角を大きくしていくと、計算上では屈折角が90°以上なっていしまいます。この状態では、光はガラス基板から出ることができなくなり、界面で光がすべて反射してしまう『全反射』と呼ばれる現象が発生します。屈折角がちょうど90°になる入射角を『臨界角』と呼び、屈折率からスネルの法則を用いて導き出すことが可能です。ガラス基板の屈折率を1.5とすると臨界角は41.8°となります。
図、ガラス基板から空気中へ光が進む場合の界面での反射率
入射角が臨界角以上になると、全反射が発生することから反射率は100%となり、上図の様な反射率のグラフとなります。ガラス基板と空気の界面だけでも半分以上の光が閉じ込められることとなります。実際の有機ELでは、発光層→透明電極→ガラス基板と複層を通過する為に、ガラス基板まで達する光は減少していますので、実際の外部発光効率は約20%程と言われています。
今回は、構造がない場合について解説しましたが、次回はイノックスでも取り扱っているモスアイ構造による影響を解説する予定です。
イノックスでは、有機ELの光取出しに関連するナノインプリント金型やフィルムサンプル(基材:PET、ガラスなど)を取り扱っております。どうぞお気軽にお問い合わせください。